2014年6月23日月曜日

聡明なる歌姫の話(9)

今回の絵里シリーズ「聡明なる歌姫は戦うことを決意する~私の居場所はここにある」では、前シリーズ「美しきアルルカンは・・・」でほぼ出番のなかった宮沢勇輔が頻出します。前々作の「偉大なる哲学者達は・・・」では準主役級なのですが、彼の登場は絵里を中心とした奇妙な三角関係を作っています。絵里と英里はオリジナル作「不思議の国のErise」では、とても雰囲気のよいカップルでした。この二人の恋愛劇を中心に物語が進んでもおかしくない勢いでした。ところが宮沢の登場はそんな二人の関係に影響を与えます。もちろん、絵里自身の成長の過程で英里との交際のあり方にも疑義が生じてくるのですが、なにせ渚が勇輔の肩を持ちます(詳細は偉大なる哲学者を読んでください)。今作では、絵里と英里の仲はかなり険悪になります。逆に勇輔とは距離を縮めます。ですが彼らの恋愛物語とは違う場所で、辛く切なくハードな物語が展開します。学園と夜の街、この対照的な世界観が「美しきアルルカン」からの定番となっています。著作者の紺藤さんに次回作をたずねたところ、やはり同様な描写法を使うだろうという回答をもらいました。渚が主人公の一人であることは間違いのないドラマです。彼女の暴れぶり、苦悩に注目して見てみると、ちょっと違った読み解きができるかもしれません。
※カットはθ(シータ)さん、天真爛漫57号に掲載された挿絵です。

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