2016年8月19日金曜日

漆黒の花輪(2)

前回からの続きです。
先にも述べましたとおり『漆黒の花輪(かりん)』は、作者の紺藤氏の今までの作風を一変させるものでした。
一人称で書かれることがほとんど無い作者で、私の記憶でも30年前に一度あったきりだと思います(たぶん『黄昏の少女たち』天真爛漫4号だと思います)。
淡々とした主人公の観察眼が、物語の情景を紡いでいます。
冷静に自分の足下の状況を判断できる割には、そうなることを予測できない主人公。おそらくは性格由来で、せっかちであわてんぼうのくせに、内側に冷静な自分を飼っているからこその行動原理。突然現れた妖しい少女にも、彼女は動ぜずに会話します。
人間とあやかしの交錯なのか、それとも人と人の闇の物語なのか。
ホラーでもサスペンスでもなく、ただ不思議な世界観の物語が語られます。
来原氏が描いたオープニングカット(小説表紙)も、その不思議感を余すところなく表現しています。
シンプルでいて、物語の芯部を絶妙に描いています、さすが来原氏。
次回もこの話でいきます。
(イラストは『天真爛漫59号』掲載 小説『漆黒の花輪(かりん)』のオープニングカット。イラストの作者は来原氏です)

2016年8月9日火曜日

漆黒の花輪(1)

『天真爛漫』59号には、多くの小説が掲載されました。
なかでも紺藤氏は、短編ながらも2編を呈上し、変わらぬ健在ぶりをみせました。
1編は前回まで記事にしてきました『羊雲』です。
今回はもう一編の『漆黒の花輪』(しっこくのかりん)を紹介します。
この作品は紺藤にしては珍しく一人称で描かれており、事件を追う探偵らしき一人の女性に焦点が当てられています。
謎を解いていくもう一人のキーパーソンに「黒ずくめの少女」がでてきます。
この世の者なのか否なのか・・・
二人の会話を中心に、物語は展開します。
ホラーなのかサスペンスなのか。
妖しい展開にあいまった最高のイラストを提供してくれたのは来原です。
現在、当会のトップ2を競うイラストレーターです。
(左のイラストは『漆黒の花輪』に掲載された来原氏の挿絵)
物語の世界を充分に語り尽くしてくれています。
さて、次回はこの物語の中身についてもう少し深く突っ込んでみる予定です。